交通死亡事故と労災(業務災害・通勤災害)
1 交通死亡事故と労災
ご家族の方が仕事中や通勤中に交通事故に遭って亡くなってしまったという場合、加害者側の保険会社からだけでなく、労災保険からも給付を受けることが出来る可能性があります(ただし、二重取りにならないよう両者が調整されることもありますので、詳しくは弁護士にご相談ください。)。
以下では、ご家族の方が交通事故に遭って亡くなってしまった場合に、労災保険から受けることのできる可能性のある給付について、代表的なものをご紹介いたします。
2 労災保険から受けることのできる給付の内容
⑴ 療養(補償)給付
交通事故に遭って死亡するまでに要した治療費や薬代については、労災保険から「療養(補償)給付」を受けられる可能性があります。
労災保険が指定する医療機関で治療していた場合には、治療費については労災保険から医療機関へと直接支払いがなされますので、被害者の方は窓口での負担なく治療を受けることができます。
⑵ 休業(補償)給付
交通事故に遭ってから死亡するまでの間に、働くことができず勤務先から賃金をもらうことができなかった点については、労災保険から「休業(補償)給付」を受けられる可能性があります。
休業(補償)給付の金額は、給付基礎日額(原則として、傷病が発生した日の直前3か月間の賃金の総支給額を日割り計算した金額となります。)の60%です。
⑶ 葬祭料
交通事故に遭って死亡した方について葬儀を行う場合は、労災保険から「葬祭料」の給付を受けられる可能性があります。
葬祭料の額は、①31万5000円+給付基礎日額の30日分と、②給付基礎日額の60日分のいずれか高い方となります。
⑷ 遺族(補償)給付
交通事故に遭って亡くなった方のご遺族に対しては、労災保険より「遺族(補償)給付」が支給される可能性があります。
遺族補償給付は、「遺族(補償)年金」と「遺族(補償)一時金」に分けられます(被害者の方が亡くなった場合については、他にも「遺族特別支給金」や「遺族特別年金」というものも受給できる可能性があります。)。
ア 遺族(補償)年金
遺族(補償)年金の額は、遺族の人数によって下表のとおり変動します。
遺族数 | 遺族補償年金の額 |
1人 | 給付基礎日額の153日分 (ただし、遺族が妻で55歳以上、または年齢にかかわらず妻が一定の障害を認められている場合は給付基礎日額の175日分) |
2人 | 給付基礎日額の201日分 |
3人 | 給付基礎日額の223日分 |
4人以上 | 給付基礎日額の245日分 |
イ 遺族(補償)一時金
これは、①死亡時に遺族(補償)年金を受け取る権利のある遺族が1人もいなかった場合か、②遺族(補償)年金の受給権者がいなくなり、かつ、既に支払われている遺族補償年金等の額が給付基礎日額の1000日を下回っている場合に支払われる一時金のことです。
①の場合は、給付基礎日額の1000日分が、②の場合は、給付基礎日額の1000日分から既に支払われている遺族補償年金等の額を差し引いた額が支給されます。